事業継承を考える

日本社会の人口構成を見ると、今後少子高齢化はさらに進む予定です。中小企業の経営のうち、特に資本金1,000万円未満の小規模企業は社長の高齢化が少しずつ進んでいる状況で影響が押し寄せていると言えるでしょう。

大企業では組織が複雑重厚な状況のため、社長に就任するまである程度の期間が必要なためそもそも社長就任時点で高齢であることが通常です。

しかし中小企業の場合は大企業より組織が単純、さらに若手経営者が起業するケースも多いことから社長の平均年齢は低い傾向にあるはずなのに年々高齢化が進んでいる状況が見られます。

Step1.中小企業の後継者不足問題

中小企業、殊に小規模な企業において、従来なら家業として社長の子へ事業が承継されていました。しかし現在は少子化であり、跡取り候補が不足している状況である上に社会構造が変化していくことで売上減少の危機にもさらされていると言えます。

さらに子がいたとしても職業選択の多様化などで必ず会社を承継するとも限らず、社長交代は進んでいない状況です。

Step2.後継者不足を解消するための事業承継方法

このような後継者不足の問題は、事業を誰に承継するのか、それとも自分の代で廃業してしまうのかという選択を迫られる状況を起こし、社会全体にとっての重要な課題になっています。

中小企業では廃業という選択を選ばなくて良いように、どのような事業承継の方法があるかを理解し、適切な選択を行う必要があるでしょう。

2-1.事業承継の方法:子や親族に対する承継

社長の子や親族に後継者として考えられる人がいる場合、事業承継に伴って相続や贈与が発生します。

税金対策が重要になりますし、さらにいざ社長が亡くなって相続が発生した後、相続人同士で遺産争い経営権に関する紛争などが起きないように策を講じておく必要があるでしょう。

2-2.社内役員や従業員への承継

子や親族に事業を承継できる人がいない場合でも、社内の役員や従業員の中で適した人物がいれば内部昇格させて事業承継する手法を検討することになります。

役員など経営陣による会社の買収(MBO)、もしくは従業員による会社の買収(EBO)、役員と従業員が共同で会社を買収する(MEBO)がその方法です。

このような方法は後継者が存在しない企業でも、社長の経営方針や意志を引継いで貰うことができ経営の連続性が維持しやすいでしょう。

2-2-1.相続トラブルに発展する可能性がある

ただし後継者となる人は親族ではありませんので、株式や事業用資産は相続で取得できません。

さらにただ社長の座に落ち着くだけで、株式や社長の個人の事業用財産などの取得がされない場合の経営は安定しないと考えられます。

社長がリタイア後でも存命中は特に問題が生じないかもしれませんが、社長が亡くなった後で後継者と相続人との間で経営や配当、事業用資産に関する紛争が起きる可能性があります。

2-2-2.後継者の資金準備能力が問題になる可能性

このようなトラブルは会社を経営して行く上での支障となるため、社長に就任すると同時に株式や社長の個人所有の事業用財産を譲渡することを検討することが必要になるでしょう。

ただし後継者がそのような資産を取得するための資金を準備できるとも限らず、取得資金の準備はどのようにするかという問題が生じます。後継者に資金準備の能力がない場合には実現できない可能性があると言えるでしょう。

2-3.社外の第三者への会社売却

そして子や親族、社内の役員や従業員、いずれにも後継者候補がいないという場合、社外の第三者に事業承継を行うことを検討することになるでしょう。

社外の第三者と合併や買収による事業承継はM&Aという方法で、近年注目されている事業承継の手法です。

2-3-1.M&Aのメリット

M&Aには株式売却、合併、会社分割、事業譲渡といった色々な方法があり、中小企業では一般的に株式売却が利用されています。

この場合には売り手となる社長は後継者不在の問題の解決となり、通常では簡単にできない未公開株式の売却も第三者に行うことで現金化できます。社長が亡くなり相続が発生した時に必要になる相続税の納税資金の確保にも繋がるでしょう。

そして基本的に会社は現状のまま承継先に引き継がれますので、取引先や金融機関、従業員の雇用関係も維持できます。

ただし会社を構成しているのは従業員一人ひとりですので、それぞれを協調して事業を進めていくためにも理解を得る姿勢を見せることが必要となります。

Step3.事業承継対策として保険を活用する方法

社長が自社の株式を後継者に譲渡する場合、まず問題になるのは税法上の自社株の評価額です。

利益が上がっている場合には株価は高騰しているでしょうから、株式の譲渡や贈与の際にはこの株価高騰が移転コストとしても大きくなります。税負担を軽減するには株式評価額を引き下げることが必要となるでしょう。

自社株価評価額を算定する方法には「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。この2つの方法で自社株評価額を引き下げる方法として生命保険を活用することを検討してみましょう。

3-1.類似業種比準方式での自社株評価額引き下げ方法

株式を上場していない企業の株価は、利益、配当、純資産の3つの要素で決定します。その内、利益の影響力が最も高いことから、生命保険の保険料を損金算入することで利益を一時的に引き下げて株価を引き下げることに使えます。

支払った保険料を損金算入できる保険商品は、定期保険(長期平準定期保険や逓増定期保険)、養老保険(福利厚生プラン)などです。

なお、保険料の額や損金算入できる割合などは保険商品によって違いがありますので、状況に合った内容の保険を選択するようにしましょう。

3-2.純資産価額方式での自社株評価引き下げ方法

純資産価額方式は純資産の大きさで評価額が計算されます。そのため純資産価額を下げることが株価評価額を引き下げることに直結します。

純資産価額を下げる対象となる保険商品には、終身保険、養老保険、長期平準定期保険、逓増定期保険などがあります。

満期このように保険金や解約返戻金のある保険に加入することになりますが、例えば解約返戻金のある保険では純資産価額方式での評価額は評価する時点の解約返戻金で算定されるため、支払った保険料の累計額より低くなっている解約返戻金額により純資産価額を下げることができます。

Step4.事業承継問題に対応するために

中小企業の経営者の高齢化は社会的な問題となっていますが、様々な事業承継方法のうちどの方法を選択するかは会社の状況に応じてということになります。

さらに資金確保や節税対策、事業承継対策といった企業の様々な場面で活用するために生命保険への加入なども検討してみる必要があるでしょう。